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結婚10周年記念日(後編) [雑記]

restaurant は、もともと、フランス語で「回復をさせる、体の機能を正常に戻す」という意味の restaurer という他動詞の、現在分詞形 restaurant(回復をさせること)に語源がある。レストランに行くことは、どこか心躍るものがあるが、それは自分を元気にしてくれるからなのかもしれない。とはいえ、ひとりではさびしいものだけれど。

結婚記念日の当日は、そんなレストランでも、お気に入りのイレール・ドゥーブルにパートナーと向かった。前日のアピシウスでのクラシックなフレンチに続いてだが、個人的には毎日フレンチでも飽きないくらいなので、この日も楽しみだった。

a.イレール・ドゥーブルのサイン.JPG

イレール・ドゥーブルは、二子玉川の玉川高島屋ショッピングセンターにある、恵比寿のイレールの姉妹店。とはいえ、島田シェフのイレールとはお料理の傾向が異なり、こちらはジビエをたくみなエピス(香辛料)で楽しませてくれたり、内臓料理など、どこかマノアール・ダスティンをほうふつとさせるところがある。菊池スーシェフは、五十嵐さんのもとで修行をしたことがあるそうなので、そのエッセンスが含まれ、なおかつ新しい味への挑戦が加わっているのではないかと、僕は評価している。とにかく、二子玉川でちゃんと食事をしたい時には、このお店とわが家では決めてきた。

余談になるが、イレール・ドゥーブルは irréel deux-boules と書くのだけれど、irréel がフランス語の「非現実」を意味するのに対し、" deux-boules" は長年疑問に思ってきた。しかし、最近気がついた。deux は同じフランス語の「2つ」だが、"boule" は「球、玉」を意味する。つまり、あわせて「二こ玉」ということなのだろう・・・シャレの利いた名前だ。現実を離れ、ひととき夢の旅へ出かけられるレストラン、そんな感じだ。

菊池シェフとの付き合いは数年だけれど、わが家が色々わがままをいうのと、彼の趣味とわが家の趣味が合致しているところがあって、このお店では長いことメニューを見ていない。もう、すべて「おまかせ」。実は、値段もよく分かっていない。菊池シェフは、常に隠し球のジビエやら他の秘密の食材を持っていて、我々が行くと、それをこっそり取り出して、華麗な料理に昇華させてくれる。その素晴らしさについては、いくら書いても書き足りないのだけれど、また機会があれば・・・同じレストランを通い続ける良さは、こんなところにもあるのだと思う。

そのような理由で、今回は「菊池さん、結婚十周年はあなたのレストランで、ルロワのリシュブールをあけたいから、よろしく頼みますよ」というアバウトな注文だけしてあった。最後の結婚記念ディナーだけれど、信頼関係があるので、これだけで十分伝わる。

b.イレール・ドゥーブルの入り口.JPG

今回は、そんな結婚10周年記念の特別メニューを書いてみる。

・3 amuse-bouche étè
 季節のアミューズ・バリエ
 有機人参のムース、自家製オリーブのマリネ、岩牡蠣のグラチネ、ズワイガニのフラン、常磐メゴチのフリット

・Cooktail de homard et Pêche blanc au vinaigre de xérès
 活オマール海老と白桃、夏の加賀野菜のカクテル仕立て

・Crème de maïs
 宮崎産トウモロコシの冷製ポタージュ

・Filet de "AINAME", Poêlé aux fine herbes
 石巻産・活アイナメのポワレ、フィーヌゼルブの香り

・Granité au estragon
 エストラゴンのグラニテ

・Pigeonneau braiser aux chou
 ブレス産・仔鳩のアバ入りキャベツのブレゼ、モリーユ茸風味の赤ワインソース

・Mousse de noix de coco ur la soupe de mangue frais
 ココナッツのムースと完熟マンゴーのナチュラルスープ

・Gâteaux
 結婚10周年記念ケーキ

ワインは、以下の通り。

・アペリティフ
 POMMERY Brut Royal

・白ワイン
 CORTON-CHARLEMAGNE 2000 / Bouchard Pere & Fils
 シェフとマネージャからのプレゼント!ありがとうございます。

c.コルトン・シャルルマーニュ2000.JPG

・赤ワイン
 RICHEBOURG 1998 / Domaine Leroy
 わが家の秘蔵。

d.リッシュブル.JPG

この日のお料理は、わが家の秘蔵の Domaine Leroy(ドメーヌ・ルロワ)の RICHEBOURG(リシュブール)にフォーカスを当ててもらったのだけれど、抜栓後、シェフにもワインの味見をしていただき、さらにメインの仔鳩のブレゼのソースにも、このリシュブールが入っている。ちなみに、仔鳩のブレゼは、仔鳩の羽以外のすべての素材を、たとえば骨は砕いてソースにしたりと、何も残さず使って調理された逸品だった。下ごしらえからとても手間暇をかけたお皿。その奥深い味わいは、リシュブールとがっぷり四つに組んだ形で、菊池シェフの気合いを感じた。

e.半個室でゆっくりワインを楽しむ.JPG

f.シェフ入魂の小鳩のローストavecリッシュブル.JPG

アミューズ・ブッシュから手が込んでいたけれど、とにかくこのワインとお料理との幸せなマリアージュを「体験」した夜だった。この菊池さんの料理、そしてリシュブールの味は、終生、記憶に残ることと思う。

残念ながら、このイレール・ドゥーブルはこの7月21日に閉店をしてしまう。僕もパートナーも、シェフを追いかけていくつもりだけれど、突然の話に実に残念としかいいようがない。オープンしたばかりのころは「最初の1か月、鳩が1羽も出なかったんですよ~」と嘆いていたシェフ。一年364日を朝から晩まで厨房で働き、素晴らしいお料理を創り出し、やがて多くのお客さんに愛されるようになったのに、とても残念だ。閉店まで、通いつめたいと思っている。

g.嬉しいデザート.JPG

そんな別れと同時期になったけれど、これからの10年、再出発と思い、パートナーとともに人生の船旅に出たいと思う。菊池シェフの出発も応援しつつ。"Time to say good-bye" は旅立ちの歌だ。
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