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南イタリア最高のレストラン「ドン・アルフォンソ1890」のおもてなし [イタリア旅行記]

アマルフィ海岸の、サンタガタという小さな町に、南イタリア最高のレストラン「ドン・アルフォンソ1890」がある。南イタリアで初めてミシュランの三つ星を取ったことのあるレストランとしても有名だ。オーガニックにこだわった農園を持ち、リゾートらしく風光明媚で、かなりこだわりのあるリストランテだと聞いていた。パートナーの提案で、僕の誕生日は、このレストランで祝うことになった。

アマルフィ海岸
アマルフィ海岸の美しい眺め

「今晩、ドン・アルフォンソへ行くんだ」とホテルのステファノに言ったら、それは素晴らしい!と、すぐにリムジンの手配をしてくれた。サンタガタは、ソレント半島の山間部にあり、公共交通機関で行くのは至難の業だからだ。

リムジンはメルセデス
ステファノの手配してくれたリムジン

リムジンは、メルセデスだった。普通のタクシーみたいなものが来ると思っていたので、ちょっとびっくりしたけれど、こういうレストランに行く場合には、やはりそれなりの準備というものが必要らしい。

ソレントから1時間弱走っただろうか。到着すると、レストランのスタッフがすぐにやってきて、ドアを開けてくれた。気が利いている。でも、どうやらそういうサーヴィスをしてもらえる場合と、そうでない場合があることに気がついた。ステファノの言う通りかもしれない。

ドン・アルフォンソ1890
ドン・アルフォンソ1890の敷地は、かなり広い

ドン・アルフォンソ1890は、夜の8時にオープンなのだけれど、早めの7時半に到着してしまった。イタリアのレストランは、午後8時からというところが意外と多い。しばし、敷地内にあるウェイティングバーで、待つことになった。

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リゾートらしいウェイティングバー

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まずは、ストゥツキーノとスプマンテを楽しみながらオープンを待つ

ウェイティングバーからは、調理室が見える。

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ドン・アルフォンソの調理室の一部

調理室もタイルを多用しており、南イタリアのリゾートなんだなと感じさせてくれる。

パートナーが気がついたのだけれど、どうやら着物で現れたパートナーを見て、スタッフ達が大慌てになったらしい。レストランの中が少し見えたのだけれど、テーブルの配置を大幅に変更していたそうだ。さてさて。

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ドン・アルフォンソ1890の店内。白を基調としたエレガントなインテリア

通されたのは、普通のテーブル席ではなくて、絵が飾ってある特別なソファ席だった。このレストランには、このソファ席は2つしかない。 おそらくパートナーの着物効果なのではないかと思う。

table
ラブリーなソファ席へ案内してもらった

ちょっとラブリーな感じだけれど、店内が見渡せてとても居心地のよい席。

再び、スプマンテで乾杯をしつつ、メニューを見る。La Tradizione という伝統的な料理によるコースと、La Degustazione と呼ばれるモダンな「マルチコース」、およびアラカルトの3通りが用意されていた。僕たちは、La Degustazione を選ぶことにした。

ソムリエによるワインのサーヴィス
ソムリエによるワインのサーヴィス

ソムリエに、このコースの内容を聞き、それに合ったワインのマリアージュの提案をしてもらうことにした。ワインリストはかなり充実しているのだけれど、料理がイメージしにくいので(これはコモ湖の「ミストラル」の時もそうだったけれど)、おまかせにした。誕生日だし、少しくらい高いボトルでもよいかと考えていた。なんと、このソムリエは日本語が少し話せてびっくりした。ドン・アルフォンソ1890のスタッフは、時々招かれて、ホテル ニューオータニへ来ているとのことだ。

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Tenuta Adolfo Spada の FLORES 2007

普段は赤ワインばかり飲む我が家だけれど、提案されたのは、地場品種であるファランギーナ種とフィアノ種の混醸の白ワインだった。Tenuta Adolfo Spada の FLORES 2007。そう、ナポリ近郊の世界遺産でもあるカゼルタにあるワイナリーだ。まさに地元のワイン。ちょうど先日 MW ジャンシス・ロビンソン女史も言っていた通り、「マルチコース」には地場品種の白ワインを合わせる、というセオリーにのっとっていることに気がつく。

FLORES 2007 は、IGT Roccamonfina だ。グレコやフィアノの DOCG もリストにあったけれど、ドン・アルフォンソ的にはこれが華やかでバランスがよくモダンで料理との相性がよくお勧めとのこと。ファランギーナ種が85%、フィアノ種が15%。全て手摘みで収穫され、ステンレスタンクで発酵と熟成がされる。生産量は8,000本で、地元にしか出回っていないらしい。外観はムギワラ色の淡い色調で、輝きがある。とてもフレッシュで切れのよい白だ。白い花のようなフローラルな香りや、リンゴやかんきつ類の爽やかな香りが広がり、華やか。しっかりとした酸とミネラルのバランスがよく、骨格がはっきりとしていてはつらつとした印象。ただ、サーヴする温度は12℃~14℃とエチケットに書かれていた。

サーヴィスは、総じて、エレガント。フレンドリーだけれど、よく気配りができていて、心地がよい。

さて、料理はというと、マルチコースだけあって、独創的な美しい盛りつけ(ある意味、和的な要素が感じられた)のお皿が次々と出てきた。

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Calamaretto leggermente affumicato ripieno di formaggi locali con crema tiepida di peperone giallo
軽く燻製した赤ちゃんイカに、地元のフォルマッジオを詰めて、温かい黄コショウのスープを添えて

和食を思わせるお皿だけれど、きちんとした南イタリアの風味を感じる。ワインとの相性もいい。

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Anatra ai sentori di cacao, arancia, banana e riduzione di Aleatico
カカオとオレンジ、バナナ、そしてアレアティコ種のワインを煮詰めた香りのアヒル

なるほど、こういうお料理があるから、白ワインの FLORES を合わせのだと気がついた。新しい味だけれど、エレガントで美味しい。

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Ristretto di cappone di mare con nudi di ricotta ed ortiche
リコッタチーズとイラクサの小片にホウボウのコンソメを添えて

これはとても和のテイストを感じる一品。実際、魚の団子のような味わいだった。

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Cappelli di pasta farciti di pollo biologico alla genovese con fonduta di parmigiano e verdure croccanti
オーガニックチキンを詰めた自家製パスタのCappeli。ジェノヴェーゼのラグーと、パルミジャーノのフォンデュにクリスピィな野菜を添えて

プリモピアットに相当するお皿。チキンのしっかりした味わいに、食感が楽しい。

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Cernia ai sentori di vaniglia con crocchette allo zenzero e zabaione alla colatura di alici
ヴァニラの香りのハタに、ジンジャーのクロケット、イタリアの「魚醤」のサバイヨンを添えて

セコンドピアットのひと皿目。手が込んだ複雑さのあるハタのお料理。

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Faraona di campo farcita di fegato d’oca al profumo di alloro e “ chips” di peperone rosso
放し飼いのホロホロ鳥にガチョウのレバーを詰めてローリエの香り、赤ピーマンの”チップス”を添えて

セコンドピアットのふた皿目。ホロホロ鳥がガチョウのレバーによってしっかりした味わいとなり、香りが高い。

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Selezione di formaggi
フォルマッジオに蜂の巣の蜂蜜を添えて

蜂蜜が、蜂の巣に入っているところが嬉しい!フォルマッジオのセレクションも、かなり充実していて選ぶのに迷うほどだった。

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piccola pasticceria
小菓子

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Dolce

ジャガイモを使った独創的なドルチェ。

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バースディケーキ!

パートナーとスタッフに祝福された幸せな一瞬。

食後には、エスプレッソと自家製リモンチェッロをいただいた。やはり、アマルフィならリモンチェッロ!

実は、こうしてお料理がサーヴされている間中、マダム・リヴィアが各テーブルをまわって、挨拶をしていた。我が家のテーブルにも、2,3度足を運んでもらったと思う。とても気遣いのある美しい方で、他のテーブルでは「あのマダムが来てくれた!」と喜んでいた人もいた。イタリアでは、かなりな有名人のようだ。

そのマダムから、「よろしかったら食後にライブラリーへいらっしゃいませんか?」と誘われた。全員というわけではないので、マダムのお気に入りや特別なイベントのゲストが案内されているのかもしれない。

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ドン・アルフォンソ1890のライブラリー

このライブラリーは、1890年にさかのぼるドン・アルフォンソの資料の他、自家製のリモンチェッロやオレンジジャム、オリーヴオイルなども購入することができる。だけれどソファでくつろぎ、マダムと歓談のできる、さながらサロンのようなところ。美味しいリモンチェッロも無料で飲ませてもらえる。スイスから来たご夫妻とも仲良くなった。「日本の方はチーズは食べるの?」なんて聞かれて、笑ってしまったけれど。僕が、ネスプレッソのファンであることや、スイス航空で来たのですよ、などと話をして盛り上がった。

さらにその後、地下のカーヴへ案内をしてもらった。

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ドン・アルフォンソ1890の地下カーヴへ

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カーヴは、地下50mまであり、4万本のワインが眠る

ドン・アルフォンソ1890の地下カーヴには、見覚えのある偉大なワインがずらりと並んでいた。実に4万本。素晴らしいカーヴだ。ワイン愛好家としては、ただただ溜め息が出てしまったが、それにしても長い階段がつらかった!

その後、さらにドン・アルフォンソのクッキングスクールのキッチン(青いタイル張りでとても美しい)や、庭園なども案内してもらった。また、宿泊施設もあるそうで、プールもあった。

星付きのグランメゾンなのだけれど、単なるレストランではなく、農園を持ち、宿泊もでき、様々なファシリティを持った素晴らしいドン・アルフォンソ1890。Non Solo Ristrante といったところだろうか。なるほど、南イタリア最高のレストランと呼ばれる理由が分かった気がする。

ゆっくりくつろいでいたら、気がついたら、午前1時近くになっていた!

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マダム・リヴィアと一緒に

最後に、マダムと一緒に写真を撮った。「今度は、ぜひ泊まりにいらっしゃってくださいね」とマダム。さらにお土産に、パスタやドン・アルフォンソ1890のDVDなどをいただいた。

そしてマダムやスタッフの皆さんに見送られながら、タクシーでドン・アルフォンソ1890を後にした。

ここには書かなかったけれど、さらに色々な気配りをしてもらったことや、昔のエピソードの話なども記憶に残っている。

サンタガタへ行くのは、ちょっと大変だけれど、もしアマルフィ海岸へ行くことのできる方がいらっしゃったら、ぜひともドン・アルフォンソ1890を体験してみてほしい。ここには、イタリア流の、おもてなしの心が満ちあふれている。


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hako

実に優雅な時間を過ごされましたね。
相当贅沢な、お誕生日で、素晴らしいです。
by hako (2010-03-01 20:10) 

YUTAKA

HALさん、nice!をありがとうございます。

いつも素晴らしいお写真に癒されています。

今回の記事の写真は、1枚だけでしたね・・・ワインカーブの。
あとのものは、イメージセンサーの限界を感じました。
ランチも素晴らしいレストランですので、お近くにお寄りの
際には、ぜひ!

ほりけんさま、nice!をありがとうございます。

色々、復活まで大変ですが、応援しておりますので、
よろしくお願いいたします。

artfuldoge さん、nice!をありがとうございます。

本物を知るartfuldogeさんの記事のファンになりました。

横田さんnice!をありがとうございます。

ワイングラスも、本当に種類がたくさんありますね。
我が家は主にリーデルで、若干のロブマイヤーといった
感じです。

hakoさん、nice!&コメントをありがとうございます。

レストランというよりも、ちょっとした旅行という感じでした。
いや、旅行中のことではあるのですが(笑)。
マダムのお心遣いが、とても嬉しかったです。
(ワインが好きだという話を聞いて、カーヴに案内して
いただいたのです)
by YUTAKA (2010-03-03 13:51) 

YUTAKA

REI さん、nice! をありがとうございます。

REI さんのブログを読んでいると、とてもシチリアが恋しくなります。

JBOYさん、nice!をありがとうございます。

いつも高品位な HDR 画像に、びっくりしております。
by YUTAKA (2010-03-03 13:53) 

YUTAKA

akipon さん、nice!をありがとうございました。
by YUTAKA (2010-03-06 18:29) 

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